ダイバーシティ オブ 街路灯 イン 佐久穂町

2026.09.01あー

ダイバーシティ オブ 街路灯 イン 佐久穂町

ポツンと道に佇んで、周囲を照らす存在。それが、街路灯。

夕方にかけて空が暗くなってきた頃に、さりげなくあかりが灯る。普段は当たり前すぎて気づかないけれど、真っ暗な道を通った時には、そのありがたさを実感する。

私たちの生活を安全にしてくれる陰の立役者、そのひとりが街路灯なのではないか、と思う。

今こそ、よく見てみよう。にょきっと地面から生えた、彼らの姿を。すると、すぐに気づくはず。そこには多様性があることに。

町で見られる花を模した姿、時代を反映するデザインをした姿、はたまたシンプルで機能的な姿など。それぞれが自由に、自分のスタイルを謳歌している。一度存在に気づくと、今まで気づかなかったその姿が、次々に炙り出されていくのもおもしろい。

佐久穂町内に佇む、いくつかの街路灯。時代のニーズに合わせて生まれた彼らは、少しずつ姿を変えつつある。そして今、LEDの登場により、まさに過渡期の最中でもある。

もしかしたら未来には残っていないかもしれない、現在の街路灯たちの姿。これは、ありのままの今の姿を見るべく町内を巡り、撮影&採集を試みた記録である。

そもそも街路灯って?その歴史はガス燈まで遡る

街路灯とは、主に夜間の暗い時間帯に道路や周辺を照らして、人々の安全や交通の円滑化をはかるためのインフラのひとつを指す。交通量の多い場所や、市街地などに重点的に置かれることが多い。

基本的な維持管理は行政が行っている。佐久穂町の場合、電気が切れれば、街路灯に個別に振られた番号を元に現地に向かい、職員が電球を交換する。町民の生活を維持するために、インフラ整備は当たり前だが、人の手で行われている。

道を照らす灯の歴史もみてみよう。

1872年(明治5年)に横浜にガス燈が設置されたのが、日本で最初の事業だった。公共の場所で初めて電気を用いたものが使われたのは、1882年に銀座に設置されたアーク灯と言われている(アーク灯は、放電による光を用い、淡い紫色の強い光を放つ特徴がある)。

トーマス・エジソンが実用的な白熱電球を発明したのが1879年、日本では大正時代の後半(1920年代前後)に街路灯に使用されるようになった。

1940年代になると蛍光灯が出始め、1960年代ごろには水銀灯・ナトリウム灯などが登場する。ナトリウム灯は温度変化による影響が少なく、橙色の光が霧や雪の中での使用でも視認性に優れていたため、寒冷地でよく使用された。町内にも残るナトリウム灯は、その名残でもあるのだろう。

そして、2010年代ごろからはLED照明が普及し始めた。※1

現在は省エネ性能の高さから、順次古いものはLEDに切り替えを行なっている最中だ。街路灯そのものの老朽化や蛍光灯の販売終了なども相まって、徐々に古い街路灯が切り替わっていく時代。

現在新設されているものは、機能的な照明器具。古い時代のものに関しては、今あるものが壊れたり使えなくなったりしたら、順次高機能なものに切り替わっていく予定だともいう。

人々の暮らしを守るためには、合理的な選択だ。しかし、今ある多様な街路灯たちも、記憶に残しておきたい。というわけで、今回は佐久穂町役場で管理している9つの現役街路灯を鑑賞ポイントともにご紹介しよう。※2

※1公益社団法人日本防犯設備協会防犯証明委員会. “2022年度調査報告書 防犯灯の歴史ーガス灯からLED防犯灯までー”. 2023 参考

https://www.ssaj.or.jp/jssa/pdf/bouhan-shoumei_r5.pdf(閲覧日2026年8月21日)

※2街路灯の名称については正式名称でないものも含まれます

ききょう灯

特徴ききょうの花の形をした街灯、花の部分はガラス製
設置箇所旧佐久町側(全域)
撮影場所東町商店街周辺

花の形をした街路灯は各地でよく見られるが、こちらは“ききょう”の形をしている。メジャーな花ではあるが、街路灯のデザインとしては珍しい?どちらにしろ、このききょうは花だけでなく葉っぱの部分もデザインされており、たおやかな印象だ。気品溢れる立ち姿で、夜になると柔らかく周囲を照らす。ガラス製の笠がクリアすぎないところもまた、奥ゆかしい。

すずらん灯

特徴すずらんの花の形をした2灯式街灯、花の部分は強化プラスチック製
設置箇所旧佐久町側(宿岩、高野町のみ設置)
撮影場所佐久穂町役場周辺

※H26年度LED化事業に伴い経費削減のため電球設置が2灯から1灯になった

こちらも花を模したデザイン。すずらんは街路灯では全国的によく見かけるが、それぞれの場所で個性がある。佐久穂町のすずらんは、花の形をリアルに再現するスタイルで、プラスチック製の笠部分には、よく見ると花びらが表現されている。色合いも含めて写実的。ふたつ控えめにぶら下がっているのも、かわいらしい。

榎田灯

特徴旧榎田商店街が設置した2灯式街灯
設置箇所旧佐久町側(高野町のみ設置)
撮影場所栄橋周辺

※H26年度LED化事業に伴い経費削減のため電球設置が2灯から1灯になった

こちらは設置エリアが限られている、ちょっとレアな街路灯。和風かつカクカクとした直線的なデザインが特徴。花のデザインなどに比べると一見地味に見えるかもしれないが、じっくりと見ていると、そのラインの潔さが病みつきになってくる。下に空いた穴があえて丸なのも、モダンアートを見ているような気持ちになって、じわじわくる。

文化灯

特徴2灯式街灯
設置箇所旧八千穂村側
撮影場所ユーパレット周辺

※H10年度ふるさと事業にて設置されたもの
※H26年度LED化事業に伴い経費削減のため電球設置が2灯から1灯になった

こちらもレトロな風合いを感じるデザイン。洋風な雰囲気を纏っていて、ガス燈をオマージュしているようにも見える。笠の部分から上に伸びた先端が、槍のように尖っているのもポイントだ。そこに対して柱との連結部分の丸みを帯びている板が、錦絵によく見られる雲の表現のよう。それも相まって明治時代の面影がそこはかとなく感じられる。

やちほ灯

特徴丸型の照明器具、電柱等に共架
設置箇所旧八千穂村側(一部旧佐久町側にもあり)
撮影場所宮前団地周辺

※順次小型LED照明器具に交換

佐久穂町は合併前の旧佐久町側と旧八千穂村側で設置されている街路灯の種類が分かれているものも多い。こちらはとてもわかりやすく、「やちほ」と名前がついたタイプだ。ドラえもんのタイムマシンについているあの部品にそっくりに見えて、未来への明るい希望を感じなくもない。古いものが多く、順次交換が進んでいる型でもある。

商工会灯

特徴丸型の照明器具、2灯式
設置箇所旧八千穂村側
撮影場所天神橋周辺

※旧八千穂村商工会で設置された
※H26年度LED化事業に伴い経費削減のため電球設置が2灯から1灯になった

こちらは連なったクリアなオレンジ色が目をひくデザインで、すずらんのように垂れ下がるのではなく、上向きなところがおしゃれな2灯式。ミッドセンチュリーの風が吹く色使いやフォルムが、時代を反映している。連結部分の弧を描いた柱やアンバーと空の青の対比に、つい目を奪われる。

公民館灯

特徴地区公民館用の街路灯
設置箇所旧八千穂村側の地区公民館にのみ設置
撮影場所中央公民館

※修繕実績がないものはナトリウム灯が使用されている

こちらは公民館の傍らに建てられているもので、その名も潔く「公民館灯」。前述の商工会灯をひっくり返したようなクリア×不透明部分がアクセント。真っ直ぐの柱に球体のガラスが刺さったような、シンプルな潔さを感じさせる佇まい。凝った装飾もおもしろいけれど、余分なものを削ぎ落とした普遍的デザインもやはり美しい。

蛍光灯

特徴蛍光灯
設置箇所町内全域
撮影場所佐久川上線、東電調整池近く

※水銀使用製品のための2027年までに製造・輸出入が終了予定、順次小型LED照明器具へ取り替えを行っている
※旧佐久町側は電気契約がないものも存在

蛍光灯、という言葉自体も、だんだんと聞くことが少なくなってきた。絶滅危惧種のこちらは、技術の革新や新しい照明の登場と共に消えゆく存在だ。すでに光を失っている街路灯も存在しているとのこと。これからはより明るく道を照らす省エネ製品に移り変わっていく予定。

小型LED照明器具

特徴購入時期によりメーカーが異なる
設置箇所町内全域
撮影場所天神橋周辺

※やちほ灯、蛍光灯を小型LED照明器具に順次交換している

現在新設されているのは、こちらの街路灯。明るく道を照らすことで私たちの暮らしの安全を、さらに向上してくれる優れもの。形も小型でフラット、コンパクト。これからの町を見守ってくれる存在になるに違いない。

身近にある大切なインフラ、街路灯

佐久穂町役場によれば、現在使われている花などのデザイン街路灯(笠部分)の予備はないそうで、老朽化や破損により交換の必要が出てきた場合には、新しい小型LED照明器具に置き換わっていくことになるという。

ガス燈の時代から、現代へ。時代の移り変わりとともに、街路灯は進化を続けていく。今ある街路灯たちが一生懸命その役割をまっとうしている姿を見ると、愛おしく感じてしまう。

佐久穂町の多様な街路灯。町に出たら道路の脇に、きっといる。いつも目にしている健気な姿に、改めて注目してほしい。昼の姿も、夜の姿も、それぞれのよさがきっとあるはずだ。